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仙台高等裁判所 昭和24年(を)655号 判決 1950年6月07日

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

判決要旨

刑訴法第三〇一条にいわゆる犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後とは犯罪事実に関する他の一切の証拠が取り調べられた後という意味ではなく自白の補強となるべき何等かの証拠が取調べられた後ならば適法に自白調書の取調を請求することが出来る趣旨と解す。

理由

刑訴法第三〇一条にいわゆる犯罪事実に関する他の証拠が取調べられた後とは犯罪事実に関する他の一切の証拠が取調べられた後という意味ではなく自白の補強となるべき何等かの証拠が取調べられた後ならば適法に自白調書の取調を請求することが出来る趣旨と解すべきところ本件につきこれを見るに原審公判調書によれば検察官は証拠により証明すべき事実を述べ次いて(一)証人永澤行雄(二)証人櫻庭貞子(三)証人畠山芳郎(四)証人何振順(五)証人齋藤芳太郎(六)証人佐々木勇(七)証人湊谷孝二郎(八)証人菊地英男(九)被告人の警察署における聴取書二通(十)被告人の検察官に対する第一回供述調書一通(十一)被告人の身許調査書の各取調を請求し右(一)ないし(八)の尋問については被告人が同意すればその尋問に代えて永澤行雄の始末書一通、櫻庭貞子の答申書一通、畠山芳郎の司法警察員作成の聴取書一通、何振順の始末書一通、齋藤芳太郎の被害始末書一通、湊谷孝二郎の佐々木勇に対する聴取書一通、菊地英男の始末書一通の取調を請求すると述べ右(一)(二)(三)の証人及び(九)の被告人に対する司法警察官警部代理巡査三浦省吾作成の聴取書により訴因第一の(1)(2)の事実(四)(五)の証人により訴因第二の(1)(2)の事実(六)の証人により訴因第三の(1)の事実(七)の証人により訴因第三の(2)訴因第四の(2)の事実(八)の証人により訴因第四の(3)の事実(九)の被告人に対する司法警察官巡査部長室岡近雄作成の第一回供述調書により訴因第一の(2)訴因第二の(2)訴因第三の(3)訴因第四の(1)(2)の事実(十一)により第五の事実を立証すると述べ弁護人は右書面全部を証拠とすることに同意し証拠調に異議がないと述べ裁判官は検察官請求の書面全部を採用して取調べる旨の決定を宣し検察官は前記書面を順次朗読した上被告人に示し裁判所に提出したことが明認しうる。そしてこれらの証拠調に対し被告人及び弁護人から何等異議の申立がなかつたことも認めえられる。してみれば(九)(十)に該当する自白調書は一部の証拠調終了後引き続いてなされたものと認めるを相当とすべく(九)(十)の証拠の取調について違法の点があるということは出来ない。

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